NPO資金調達講座 戦略的ファンドレイジングを考えよう
FASIDの研修、NGOディプロマコース3学期「NGOの組織強化」を受講している。今回は「NPO資金調達講座 戦略的ファンドレイジングを考えよう」というテーマ。講師は(株)ファンドレックス代表の鵜尾雅隆氏。サブコースディレクターの坂本氏から、日本一のファンドレイジングおたくと紹介されていた。
ファンドレックス
以下、講義中に取ったメモを元に、勉強になったなあと感じたところをまとめる。
日本の寄付文化 なぜ寄付集めに苦労するのか。
- 日本社会において、寄付の成功体験がない。習慣がない。
- つり銭寄付社会 1人平均3600円。ひと口当たりが少ない。
- 縁から始まる寄付の多さ。
- 社会風土、NGOの情報不足による。
- 目に見える、わかりやすいもの、有名な団体へ集中。
- 人生にNGOとの接点があんまりない。
僕個人的には、お金を出すだけっていうのは露骨過ぎる、という意識が日本人には強いと、以前から思っている。
世界は寄付を待っているんだぜ! - フランシーヌの場合は
ファンドレイジングとは何か。
一人で多額の寄付を集めた、あるファンドレイザーのお話
「寄付をお願いしたことはない。私はただ子供たちの置かれた状況を丁寧に説明しただけ」
ファンドレイジングとは、共感を得て、解決策を提案するプロセスである。
単なる資金集めではなく、プロセスそのものが社会変革を促すものである。
ファンドレイジング・サイクル
継続的にファンドレイジングを改善するためのサイクル。
- 寄付の目的・ニーズの明確化
- 理事・ボランティア・支援者の巻き込み
- 巻き込み。検討会に参加してもらう、集める側に回ってもらう。できるだけ上流から関わってもらうと参加意識が高まる。
- 既存・潜在的寄付者の分析
- ファンドレイジング方法(コミュニケーションの内容と方法)の選択
- ファンドレイジング・プランの作成
- ファンドレイジングの実施
- 寄付者・支援者への感謝・報告
ファンドレイジング・マトリックス
どうやって各カテゴリーにアプローチするかを考える。
寄付者 | 企画段階での関与 | 個別事前感謝・報告 | DM・チラシ | イベント |
---|---|---|---|---|
大口寄付者・理事 | ◎ | ◎ | ○ | ○ |
正会員・賛助会員(継続)・中口寄付者 | ○(一部中核層) | ◎ | ◎ | |
賛助会員・小口寄付者 | ◎ | ◎ | ||
外部関心者 | ○(一部) | ◎ |
<例えば>
- 大口寄付者に、寄付キャンペーンの1ヶ月前に、再度前回のお礼の手紙、電話
- 早めの段階から絡んでもらい、参加意識を高める。
- 寄付者向けの感謝祭を催す。
ステークホルダーピラミッド
- 日常の事業の中で、どうやって階段を上がってもらうか。
- どうせやる報告会を、ファンドレイジングに結びつける。
→これがファンドレイジング体質を身につける。
<例えば>
- 報告会の中でグループディスカッションをおこない、参加者に自分で考えてもらう機会を提供、コミットを深めてもらうよう仕向ける。
ファンドレイジングプランの作成
- 目標額の明確化と具体的な積み上げ
- 年間計画を明確にし、どの時点で何を判断するべきなのか明らかにする。
- 誰が担当して進めるのか・チェックするのか明示する。
- 「ファンドレイジング体質の強化」の視点を入れる。
- 理事、スタッフ、関係者で「共有」する。
ファンドレイジング成功のための7つの原則
- 既存支援者の分析を定期的におこなう
- 目標額に対して具体的な積み上げを意識する
- ステークホルダーピラミッドを上へ上へと(半自動的に)仕掛ける仕組みを作っておく
- ファンドレイジングを「解決策の提案」という発想で捉えて考える
- ストーリー性のあるメッセージ(顔)→右脳を意識
- 感謝を7回やる仕掛けをつくる
- ファンドレイジングの責任者(理事)を決める
収益事業について
事業収入は重要な財源であると同時に、社会に活動や組織を認知してもらうツールでもある。
- その事業はミッションに沿ったものか?
日本社会では、モノを媒介にして思いが集まる。
<例えば>銚子鉄道の濡れせんべい
銚子電鉄のチャレンジ(1) : ファンドレイジング道場
銚子電鉄のチャレンジ(2) : ファンドレイジング道場
銚子電鉄サポーターズ : ファンドレイジング道場
2chも銚子電鉄を救った!? : ファンドレイジング道場
企業との連携のポイント
企業側のニーズは、支援メニューの選択肢が多いこと
- 社員が参加できること、研修になることがよく求められる。
社長は社長同士のネットワークを持っている
企業とNGOの付き合いは、未だに縁。合理的に選ばれていることはほぼない。
<例えば>
寄付募集のポイント
- 右から入って左に落とす。右脳から左脳へ。
- 人は人に寄付する。
- 次のアクションにつなげる。
Tips!
講義中に出たいろいろなアイディアや事例。
- 毎年のキャンペーンで集める場合、去年集めたお金の成果を提示する。
- 資金強化はなぜ必要か。寄付者にも説明する。
- 個人旅行先に寄付者がいれば会いにいく。
- 申し込みに対してクイックレスポンスを心がける。(楽天は3分)
- 支援者同士のネットワークを組み合わせてニーズを満たす。
- 1日x円寄付、1月x円寄付は、寄付のハードルが下がって集まりやすい。
- 継続寄付者には、x年の継続ありがとうございますメッセージ。
- がんばってる人に寄付をする。24時間テレビとか。アメリカだと多いパターン。
- ギネスに挑戦中に寄付を受け付ける。
- 海外の日本人社会をターゲットにする。
- 来年のイベントの協賛は、当年のイベント終了後のお礼回りから勧誘する。
- もったいない文化に応える
- シャプラニールのステナイ生活
- ストーリーテラーを立てる。団体の象徴的な人物。
- People Tree社長サフィア・ミニー
-
- かものはしプロジェクトの方
短期集中キャンペーン
xxちゃんを救う会など。
- 短期間で大きな金額が集まる実績がある。
周到に計画し、社会に大きな波を作る。
<例えば>
- 募金箱の設置やwebサイトなど、あらかじめいろいろ準備した上で、ある日にいっせいに募金集めスタート。街頭募金など。
参加+寄付(物作る+お金も足して送る)
-
- 絵本に翻訳シールを貼る+寄付金
- みんなで布チョッキン
- 不要布を型どおりに切って途上国に送る。途上国で人形を作る材料になる。
- その際に寄付金も一緒に集める。
- http://www.cyr.or.jp/cyrblog/cate_4.html
そのほか
- ワークライフバランスの変化→家族が大事になってきた。家族が楽しめるイベントがいい?
- 日本の遺産相続の寄付率は0.5%。
- 感謝の実施
- 日本人は感謝についてこだわる気質があるかもしれない。
- 援助についても、現地の人に本当に感謝されているのか、ということを気にしがち
もっと勉強したい
ファンドレックスのサイトに、参考文献が紹介されている。
ファンドレイジングについて理解を深めたい方に
鵜尾さんのブログやメールマガジンも。
ファンドレイジング道場
メールマガジン「黒帯への道」