NGO経営の特殊性
FASIDの研修、NGOディプロマコース3学期「NGOの組織強化」を受講している。今回は「NGO経営の特殊性」というテーマ。講師はサブコースディレクターの坂本文武氏。坂本氏は非営利経営修士号を日本人としてはじめて取得した方で、現在はPR企業の取締役で、CSRコンサルなどを行っている。
http://www.witan.co.jp/jp/about/consultants.html
以下、講義中に取ったメモを元に、勉強になったなあと感じたところをまとめる。
NGOと企業の違い
資本金のあるなし:NGOは資本金を持つことができないため、その代わりに内部留保を持ちたいという議論があるが、そう簡単には持てない。ファンドを持つところもある。
NGO特有の資金・人材調達先と:寄付・ボランティアという形態がある。無償の奉仕なので大変ありがたい反面、不安定、善意に基づくものであるため不安定である。
NGOの位置付け
組織は公益/非公益、営利/非営利の組み合わせで4パターンに分けられる。NGOは公益/非営利の非営利組織に含まれる。
非営利組織は約10万ある。NGO1団体は、そのうちの1つでしかない。
上記4パターンのうち、組織数が伸びているのは非営利組織。今後も成長が見込まれるセクターだといえる。*1
ステークホルダーとの関係
NGOは多様なステークホルダーがいる。企業に比べ直接的に関わるステークホルダーの種類が多い。これらの様々な人々は、それぞれの考えを持ちつつも、NGOのミッション(大義名分)を唯一の共通点に集まっている。
善意で協力している方が多いが、善意は多種多様であり、画一化したアプローチは難しい。
会員の管理を事務局でやってもいいのか?組織構造上、会員総会は事務局、さらに理事会の上にある。
→執行は事務局の役割のため、意思決定に基づいたルールを組織の上に守ってもらうことは問題ない。
NGOのガバナンス
NGOのガバナンスは、意思決定(理事会)と執行(事務局)が分離しており、企業と比べて先進的である。これはNPO法ができた際に、そのような経営概念が広まったためである。
組織のマネジメント機能も、あくまでもミッションを実現するための手段である。会計や評価もそのように捉え、ミッションとの関係を意識する。
NGOにおける理事会の役割・責任は、形骸化し、事務局主導型になっているところが圧倒的に多い。
NGOの世代交代
NGOは、理念先行型組織であるため、トップの世代交代が難しい。経営能力だけでトップを任せられない。
NGO職員の年齢分布では、40代がすっぽり抜けている。
現在、NGO黎明期の第1世代(5,60代)からの世代交代が課題となっている。上の方が早めにあきらめ、「来年でやめるぞー」と言ってくれるのが一番やりやすい。
NGOの人材管理
前提として、組織目標があって、そこに至るための長期戦略があるものとする。人材管理もその長期戦略に従っておこなうのが理想。タイミングごとの組織のあるべき姿を考え、そこに居るべき人材を考える。人材ポートフォリオの考え方がいる。
NGOは組織内の育成が弱い。OJTがせいぜいで研修に力を入れられない。*2
職員の貢献に対する報い方が難しい。何で報いるのか、何を持って評価するのか。
- 物的
- 昇格、昇給による基本給UP
- ボーナスはできない。NGOは利益の再配分が禁止されており、ボーナスはそれにあたるため。
- 精神的
- ジョブローテーション
- たまには現場へ。
- 実現実感、充実感、達成感
- ジョブローテーション
- 納得感(評価に対する)
- 180°評価、360°評価
- 上司だけでなく、部下、同僚からも評価を受ける。企業では上司以外に評価技術が無いため有効ではなく廃れた。
- 180°評価、360°評価
ボランティアの管理
ボランティアは、ただの無償労働力ではない。ボランティアを抱えることは、リスクを抱え込むことでもあることを意識し、必要な人材を選ぶ。
- 事業をやるにあたって必要か?
- 試用期間を設ける。
- ボランティアの野放しはNG。スタッフが方向修正する。
ボランティアの事故・不祥事もあり、その責任は理事が取っている。
支援と動機付け うるさいほど感謝を伝える。
有給ボランティアは現在法的にグレーゾーン。よっぽどの信念がない限り、今は導入しないほうが良い。
NGOの資金調達
資金調達効率と使途自由度は、トレードオフの関係にある。
←(資金調達効率:低、使途自由度:高) (調達効率:高、自由度:低)→
会費 寄付 事業収入 助成金・補助金 委託金・受託金
また、すべての資金が単年度であり、不確実なものである。
寄付者を育てる、という意識を持つ。寄付を続けてくれている人は、団体に対する信頼が高くなっているハズ。
- それまでより大きな金額を働きかける。
- 「x年続けていただいてありがとうございます。ところで、今度こういう事業を〜」
NGOの評価
NGOの事業は、企業のように利益だけで評価することが出来ない。
資金提供者と受益者が異なるため、両方向からの評価が必要となる。
評価の目的をハッキリさせる
- 学習(内部)
- 資源獲得
- 資金
- 人材
目的によって取るデータの種類やレベル感が変わる。
定性的な評価についても数字に落とす。
例:社員のやる気を測るため、玄関にスピードガンを設置した。やる気のある人は歩くスピードが早いはず。
例:カスタマサポートの顧客満足度を測るため、顧客の言う「ありがとう」の回数を取った。
顧客満足度は、期待と結果のギャップが大きいときに高く/低くなる。期待が低ければ高くなるから、これだけでは測れない。
といったことを学んだ。
まだ読み途中だけど、坂本氏の本にこのあたりのことも書いてあった。
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