国際協力NGOとは? JANIC「国際協力NGO入門セミナー」に参加した。

国際協力NGOの概要を知るため、JANICの「国際協力NGO入門セミナー」に参加した。
NGOの基本理念から、活動内容、規模、お金の流れといったところをコンパクトにまとめた、全体的なイメージを掴むのにちょうど良いセミナーだった。
僕は今、「NGOとは何か」を読んでいるが、それでも知らなかったこともたくさんあった。たとえば日本の国際協力NGOの有給スタッフは、全国に3000人程度しかいない。これは、僕の想像していた規模より圧倒的に小さかった。


参加したのはこちらのセミナー。
NGOの力を最大化する。JANIC
所要時間はだいたい2時間程度。
参加者は30人くらい。半分くらいは早稲田大学NGO AIESEC サークルの新入生。他は若い方が多かったが3,40代に見受けられる人もポツポツいらした。学生が多め。


以下、セミナーの内容。

NGOとは...

Non Governmental Organization(非政府組織)。
以下の性格を持つ団体のことを指す。

  1. 非政府性
    • "反"政府ではない。平和活動もするし、政策提言もやる。
  2. 非営利性
    • 儲けてはいけない、わけではない。利益を出してもいい。問題はその利益の使い道。株式会社のように、その利益を株主に分配するようなことはなく、得た利益を団体運営や新規プロジェクトに使う。
  3. ボランタリズム(自発性)
    • 参加者、支援者の自主性を指す。ただ働きのボランティア、だけとは限らない。給料をもらってもいい。
  • NGONPOの違いって?
    • ない。ほぼ同じものと思ってもらっていい。
    • 日本での法人格は、どちらも特定非営利活動法人、いわゆるNPO法人となる。
    • このセミナー主催のJANIC(国際協力NGOセンター)も、NGOを名乗っているが、法人格はNPO法人となる。
    • 日本にはNGOの登録制度がない。NPO法人も簡単に取得でき、どんな団体でも名乗ればそれでNGOということになる。
      • JANICは活動内容を審査の上、NGO団体を正会員として登録する制度を持っている。
    • 認定NPO法人という制度があり、国税庁の認定を受けるとなれる。
      • 国際協力NGOでは20団体程度。

ここは常々疑問に思いつつ、国内で活動するのがNPO、海外で活動するのがNGO、というイメージを持っていたが、ちがった。

活動分野

教育、保健医療、環境、飢餓など。ひとつのNGOが1分野だけということはなく、いくつかの分野にまたがって活動している。
そのほか、系統で分けられる。

など

NGOの規模

日本の国際協力NGOの規模感。

  • 団体数:400〜500団体
  • 有給スタッフ:日本全国で3000人
  • 資金規模:292億円

日本最大手で国連にも登録されているNGO、難民を助ける会でも、資金規模は6.5億。海外との規模の差がこれほどあるとは思わなかった。

NGOの資金、支援状況。

上記資金規模の内訳をここで見たい。

  • 収入の40%が寄付。
    • 117億くらい。
    • アメリカとの寄付金額の比較。1世帯当たりの年間寄付金額。
      • 日本:3,200円、0.06%
      • アメリカ:174,600円、3.2%
    • 寄付の少ない一因として税制の問題がある。前述の認定NGO法人となれば寄付額分税金が控除されるが、それ以外のNGOは控除されない。
    • NGOによっては、緊急支援を受け付けない場合もある。
      • 一時的に莫大な寄付を受けると、それにまつわる会計処理、問い合わせなどで業務が回らなくなってしまうため。

寄付による活動となっているが、これは果たして良いのかどうか。大手国際NGOの元職員、伊勢崎賢治さんは、『NGOとは何か』の中で、次のように述べている。

開発NGOの中には大きく分けて、その資金の大部分を先進国政府からの助成金で賄っているものと、純粋な民間のドナー層を開拓して賄っているものがある。
(中略)
私の周りの国際NGOを見ると、政府からの金をあてにせず、民間にしっかりドナーの基盤を築いているNGOのほうが、同じ不況の影響を受けても被害が少ないように見える。政府の助成金より、民間に「援助の良心」を広げるほうが、NGOにとって堅実な発展の仕方だと言える。
伊勢崎賢治著『NGOとは何か』 - P.190

  • ボランティア参加率
    • 日本:25.3%、2.5時間
    • アメリカ:55.5%、3.5時間


寄付をベースとした活動は良い、だが、寄付・ボランティアとも、なぜこれほどアメリカと違いがあるのか。
その理由の一つとして、アメリカには財を成した人が財団を作り、社会奉仕活動をするという文化が根付いていることがある。ゲイツ財団などはよい例だろう。日本でもようやくそのような活動をする財団が出てきているが、まだまだ到底及ばない。
一般に、国際協力の世界では、日本は欧米諸国に10年遅れていると言われるが、援助の規模からもそれが見て取れる。

NGO有給スタッフの待遇

  • 給料:低い。35才ぐらいで、同世代の半分程度の給料。
  • 男女割合:女性の方が多い。
    • 女性はほぼ未婚。
    • 男性はほぼ既婚で、共働き。
  • 年齢:20代、30代が圧倒的に多いが、それ以上の方もぽつぽつ。

先にも書いたが、日本のNGO全体で有給スタッフ約3,000人と、非常に狭き門である。ただこれは仕方がない側面がある。

農業や医療技術者など、開発援助に必要な専門家が、現地で得られないということはありえない。
それができないと言うのは、そのような人材を発掘し育成するために、異国の社会と縦横無尽に渡り合える能力がないというだけのことだ。
(中略)
技術者や学者が必要なのではない。人事、庶務、財政、外交を含む広範囲なマネジメントの能力が必要なのだ。
それをもって、有能な現地の人材を育成し、彼らが自分たちの国のために自由自在に発想し事業を実現できる環境をつくる。そんな事に喜びを感じる専門職があるべきだ。
NGOとは何か』 - P.54

現地やほかの途上国からの人材を使った方が安いわけで、そこにわざわざ日本人が行くのだから、求められる能力のハードルが高い。当然NGOの有給職員は少数精鋭にならざるを得ない。

その他、FAQで出た話。

  • CSRによる変化:企業とNGOとの共同プロジェクトが増加した。
  • 日本でも、緊急支援用基金を作ったが挫折。*1
    • 紛争地帯には民間団体は出せない。
  • ドナー(寄付者)からの問い合わせ、クレーム。
    • クレームはない。
    • 多い問い合わせは、寄付金の使われ方がどうなっているのか。
  • ボランティアに参加するための情報を得るには。
    • 複数の情報を見ること。
    • ボランティアに参加していると、ボランティア同士の横のつながりで情報が流れる。
    • 気になる団体に直接問い合わせて、自分の出来ることを伝える。
      • そのときには参加できなくても、必要になった際に連絡が来るかもしれない。


あと、これはセミナーのあとで個人的に聞いたこと。

この質問は、日本を含めた先進国からの援助が、必要分どころか約束した分さえ支払われていないという現状があり、そこに対しするアクションというのをどこかしらが行う必要がある。じゃあ、それをやっているNGOはあるのか?ということで聞いてみた。
教えていただいたNGO、僕は名前くらいしか知らない。

  • NGOの援助の成果は、各NGOの報告書を参照すると良い。

とのことなので、どのような活動をして、どのような成果を出しているのか、見てみたい。


全体として、よくまとまった良いセミナーだった。このセミナーは定期的に行われているので、興味のある方はJANICのサイトで予定をチェックすると良い。
NGOの力を最大化する。JANIC

NGOとは何か―現場からの声

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*1:japan platform