ファシリテーションの基礎
FASIDの研修、NGOディプロマコース3学期「NGOの組織強化」を受講している。今回は「ファシリテーション」をテーマに、Be-Nature Schoolの森 雅浩代表を講師に向かえ、その基礎を教わった。Be-Nature Schoolはファシリテーション講座を主催しており、そのコースの監修役、また講師として、中野民夫氏を迎えている。中野氏は『ワークショップ』『ファシリテーション革命』の著者である。
http://www.be-nature.jp/facilitation/index.html
以前受講した中田氏の研修では、ファシリテーションを、気付きを与えるためのコミュニケーションと捉えていた。
本音を引き出すインタビュー術と、和田流ファシリテーション術 - フランシーヌの場合は
今回の研修では、ファシリテーションを「<誰>が、<何かする>ことを容易にする」ことと定義し、会議やワークショップでのファシリテーションが想定されていた。こちらのほうが一般的に認識されているファシリテーションに近い。
そういえば、中田氏の『人間性未来論』の推薦文を中野氏が書いていた。
参加と相互作用で、他人事を自分事に
参加と一口に言っても、そのレベルは様々あるが、ここでは、参加者が場の構成要素として関わることで、全体が機能する場を参加型の場という。
そして参加者の相互作用が働くことで、1+1が3,4になるようなシナジーが発生する。
この2点によって、場を他人事ではなく、自分事にする。これがもっとも大事なことだ。
ファシリテーターのやるべきこと。
まず1.場をつくり、2.流れを組み立て、3.その中でファシリテーターがコミュニケーションを促進する。
次の項から、具体的な技術を紹介する。これらの技術は、それぞれワークを通して実体験した。
グループサイズを操る技術。
グループサイズとは、話し合うグループの人数のこと。グループサイズによって特徴があるので、その特長を活かしてグループサイズを使い分けるのが有効。これを意識して変えてやることは、簡単にできるし効果が高いということで、講義の中でもまず最初に紹介された。
ワークでは、1人(グループじゃない)、2人、8人、16人のグループを体験し、各グループ同じ時間で同じテーマについて話し合った。(一人のときは一人で考えた)時間と人数の関係というのが最もわかりやすい変化で、制限時間4分なら、1人なら自分だけ考えて4分、2人なら互いにしゃべるのが2分、8人なら1人30秒、16人なら15秒というのが自然に制限になり、それだけで話す内容のレベルが変わってくる。また、ある程度の大きさを超えたグループでは、司会役などが自然発生的に生まれた。
これは会議の場でも有効で、例えば会議が紛糾してしまっても、いったん1人で考える時間、横の人と2人だけで考える時間などをとるなどすると、クールダウンしてスムーズに進む場合が多い。*1
机の並べ方。
これはわりと自然にやっているのではないかと思う。人数少ないから机を狭めるというところから、講義やレクチャーだったら教室みたいにするとか、グループワークをやるなら机を対面に並べるとか。それをもっと意識的にやろうという話。
実際に机の並べかたを変え、実際にそこに座り、どう感じるかを言い合った。あまり違いを意識しないロの字型と円型、対面形式の島をまっすぐ並べるか斜めに並べるか、椅子をまっすぐ並べるか少し弧を描いてならべるか、というところも、参加者の心理に影響を与える。
板書の技術。
机の並べ方を発表していったとき、講師の方はそれをすべて版書していった。まとめたりせず、言ったことをそのままに。こうしてもらうとちょっと嬉しく、発言しがいが感じられた。
せっかくの発言を流してしまわないように板書することは、参加者の意欲を高める。言ったことをそのまま書くことは、発言者の意図を曲げないためで、そうすることで発言者に尊重されている感が生まれる。
実際これをやると、板書はどうしても遅いので、板書を待つ間に議論が止まってしまうという事態にもなるが、ファシリテーターの繰り返した言葉だけ書くというルール作りをするとやりやすいそうだ。個人的には、キーワードを拾って書いていくだけでもいいと思う。
流れの組み立て。
- 共有:目的や前提条件など。
- ここで気分などの感覚もなるべく共有しておくと、後ですれ違いがおきにくい。
- 拡散:話を発展させ、アイディアをどんどん出す。ブレスト的なところ。
- 収束:話をまとめる。
- 共有:決めたことなどを再度確認し、認識をあわせる。
この拡散と収束の間には、必ず混沌が生まれる。これはクリエイティブカオスとも呼ばれる。
たまに収束に向かっているところでそもそも論が出てきて話が戻ってしまうことがあるが、これは混沌も含め各ステップで充分に議論を尽くしていないから。
プロセスが複数回の打ち合わせで進められるなら、自分たちが流れの中でどの位置にいるか、拡散させるところなのか、収束させるところなのか、というところの認識を共有したほうがいい。
オリエンテーション、方向付けの技術。
オリエンテーションというのは、方向付けという意味らしい。4つの項目を明確にすることで、打ち合わせの方向付けができる。
- Outcome:成果イメージ・具体的な目標
- Agenda:アジェンダ、大まかなスケジュール
- Role:参加者の役割
- Rule:約束、心得
この4つの頭文字をとってOARR(オール)と読んでいた。みんなでオールを持って漕ぐゴムボートを想像すると覚えやすい。
Outcomeは、前述のどのプロセスにいるかで変わってくる。例えば拡散のプロセスなら、その日はアイディアをたくさん出すことを成果にしてもいい。
次の学びの道
この日の講義の内容はこのくらい。Be-Nature School のコースで言えば「入門セミナー」にあたるのかな?入門セミナーは毎月10日、夜19時から2時間半3,000円でやってる。今回の講義よりは1時間短いが、それにしても安い気がする。定員12人というのもいいサイズ。
Be-Nature Schoolのファシリテーション講座は、ステップや目的別にいくつかコースがある。僕は今度は集中講座を受けてみたい。学んだことは実践しないと身につかないが、それを実践できる機会というのはそんなにないので、その場でできるだけ身に染み込ませておきたい。
http://www.be-nature.jp/facilitation/index.html
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中田さんの研修情報はこちら。
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*1:会社に昔からある、会議はタバコ休憩のうちに決まる、ようなものか?