貧困のことをずっと考えてた。

今日、Blog Action Day 2008 に向けて、どういう記事を書くのがいいかいろいろ考えた。貧困のことはずっと考えてて、たぶんこれからも考え続けると思うので、何を書こうか悩んだ。ジグレールの『世界の半分が飢えるのはなぜ?』を紹介しようかとか、『貧困の終焉』とかスティグリッツの本とかを絡めて貧困の構造的な問題を描こうかとか思ったけど、荷が重いしそれを読んでもらってもなんだか思いの伝わらないようなものになる気がした。
なので、今日は何を紹介するということでもなく、日頃貧困について考えていることをつらつらと書いていこうと思います。


初めに言っておくと、僕は国内の貧困問題についてはそれほど関心がない。国内の最後の数%を救うことより、途上国の最初の80%をなんとかしたいという気持ち。あんまりよくないことだとは思うけど。
だって世界には死ぬほど、文字通り死ぬほど貧しい人たちが山ほどいて、その人たちを助けるためのリソースだってあるのに、その人たちは助けられずに死んだりなんだりする。構造的に解決が難しいとかなんとか言うけど、要は、助けれるのに助けてない。それはおかしいだろうと。


リソースがあるって言うのはまず食料生産量の話で、今、全世界の人口をカバーできるだけの食料がある。最近食料価格が高騰してるけど、あれは食べる分をまかなえない訳じゃなくて、サブプライムから引き上げた投機マネーが流れ込んできたり、食べる以外の食糧需要が高まったからなんだってね。
アメリカだと生産した小麦の1/4は牛の餌になる。日本もヨーロッパも農家に補助金を出して保護しながら減反したり過剰生産分を捨てたりしてる。一方では食べ物がなくて飢え死んでる人たちが山ほどいるというのに、そんなことより食料品の国際価格が下がる方が問題なんだってさ。


もう一つ、途上国への開発援助、お金の話。
先進国はGDPの0.7%を途上国への開発援助に出しましょう、という約束が、30年以上前の国連かなんかの会議で決まってる。先進国みんな同意してる。そのあとも何度かこの約束を確認する国際会議があった。
でもこの約束は、未だに果たされていない。集まってはやりましょうやりましょうって言って、もう30年以上できないまんまだ。
今までずっと、途上国は約束された援助を受けることができないまま、もっと努力しろとか言われてたんだからむかつく。
貧困の終焉』でジェフリー・サックスが試算したところによると、2015年までに貧困を半減し、2025年までに極度の貧困(1日1ドル以下)をなくすために必要なお金は、ここで約束している額で足りる。
先進国が約束を守らないと、貧困は無くならない。


リソースさえあれば貧困はなくなるのかというと、そうでもない。途上国国内の問題もある。たとえば北朝鮮は今の体制が続く限り国民の貧困は解消されない。パレスチナスーダンソマリアも、紛争があるうちはそうだろう。ジンバブエだってそうださ。
だいたいにして、貧困にあえぐ国ほどガバナンスは悪くなる。ガバナンスが悪いから貧困から抜け出せない。これはどちらが先かという問題じゃなくて、悪循環なだけだ。
じゃあお金を送っても無駄かというと、たぶん無駄な国もある。でも、そうじゃない国の方が圧倒的に多い。
話はちょっとそれるけど、だめな国があったら立て直すために力を貸すのが国際社会なんじゃないのか。ジンバブエの混乱に南アフリカが助太刀したり、中東和平のためにエジプトが走り回ったりしたように。
アフリカの途上国だって、国連ミレニアム計画(ああ、書いてて懐かしい響きだなこの言葉。)に沿って、有効な開発計画を出せる。というか出してる。それを資金が間に合わないからと縮小させて無力化してるのは先進国の僕たちだ。


さらに下の方の話で、途上国の国民、彼らに能力がない、ということは全くない!みんな肥料を使った農業の方が生産量が上がることを知ってるし、蚊帳があればマラリアを防げることを知っている。でも肥料や蚊帳を買う金がないだけだ。
マラリアにかかるからすぐ働けなくなったり死んだりするし、そうすると労働力が足りなくなったり技術が途絶える。食うに事欠くような状況だから子供を多く残そうとする。(これは責められんて!) そして生産が上がらないまま人口が増えて一人分の食料はさらに足りなくなる。
そういうところへの開発協力手法というのは、もうずいぶん確立されてて、井戸掘って道路通して終わりじゃなくて、ちゃんと住民主体で、援助が抜けても持続できる仕組みを作ることができる。お金のかかる先進国のスタッフは極力使わず、現地人材を活用することもできる。お金さえあれば、できることはたくさんある。


また視点をぐっと上の方に持っていく。なんでお金が出ないかというと、それを決めているのは先進国の政府で、その中の一人一人の議員のせいだ。だって自国の国益にならんことに国民の税金を使うなんて言ったらどんな反発食らうかわからんもんね。
でもODA倍増を発表した福田さんは攻撃された?アメリカ議会でも同じ理由で無理だと思われてた途上国の債務帳消しは国民の支持も得て実現しちゃった。


ダラダラ書いてたら一番言いたいことに行き当たった。なんで反発されないか。みんな途上国の貧困を何とかしたいと思ってるからだ。僕も、これを読んでるあなたも、あなたの周りの大部分の人も。
これはもう確信を持って言える。それに関わることをまったくやってなかったり、まったく無関心に見えたりしても、心のどこかでは絶対気にしてる。


Blog Action Day がすごいいい試みだと思っているのは、そういうことを表立って話せる機会になるからで。たぶん「えー、あの人がこんなこと考えてんの」みたいなことが結構あると思う。いわんやブログ書かない人においておや。


こうやってみんなの思ってることが表に現れてくれば、政治家も「そういう政策とっても支持得られるんだな」と思ってくれるかも知れないし、次の選挙ではそういう政策をとる政治家に票が集まるかも知れないし、途上国に不利な競争ルールを作るようロビイングを通してWTOに影響力を持つグローバル企業も「こんなことしてたらそのうちバッシングされてやばいな」と思ってくれるかも知れないし、自分の儲けだけを考えてた投機家がSRI投資に目を向けてくれるかも知れないし、日本のお金持ちが「国際協力のための財団作ってやろうかな」と思ってくれるかも知れないし、パチンコで勝った人が恥ずかしげもなくそれを寄付してくれるかも知れない。


そうなったらいいなと思っているし、だから自分でもそういうことが話せる機会があったら恥ずかしげもなく話題にしていきたいと思っているという話でした。