日本は平和の灯火なのか?

ソースは忘れてしまったのですが、何年か前「唯一の被爆国である日本は、世界にとって平和の灯火である」という旨のお話を聞いたことがあります。そういった意味で、他国にとって日本は特別な存在であり、また、そういった目で見られても恥ずかしくない国であるべきだというお話だったと思います。
これを聞いたときは感動し、日本も捨てたものじゃないなと思っていました。しかしそれっきり、そんな風な日本の評価は一切僕の耳には入らず、逆にアメリカに言われるがままイラク自衛隊を派遣して、民間人が拉致、殺害される事態になってしまっています。
これにはもう心底がっかりしてしまい、「日本は平和の灯火」なんて、実際は誰も思っていないのだろうと諦めてしまいました。

しかし最近、『憲法を変えて戦争へ行こう という世の中にしないための18人の発言』の、中村哲さんの文章から、このように日本を見ている国がある事を知りました。
中村さんは、アフガン難民の診療に20年も前から携わる医師で、2000年よりアフガニスタンで灌漑事業(水を川・湖などから引いてきて農地をうるおすこと。だそうです。知りませんでした。)も行っています。
この灌漑事業は、軍隊に守られていません。一方軍隊に守られている国の事業は妨害される事が多く、作業が難航しています。軍隊に守られるのは危険なのです。
中村さんは自分が日本人であるということに守られていると感じているのだそうです。中東の国々が「平和の国・日本」というイメージを持ち、親近感を持たれているため、自分は命拾いをしたと考えているのだそうです。
そして、中東の人々がそのように考えている背景には、第二次世界大戦中に日本から被害を被っていないこともありますが、唯一の被爆国であることと、そこから復興を遂げた国としてのあこがれ、そして経済的に豊かになったにもかかわらず、半世紀にわたって他国に戦争をしかけなかった国、ということがあります。

また、別の本の話ですが、『悪人正機』の中で、吉本隆明さんは、日本国憲法、特に第九条について、以下のように述べました。

「僕は世界の憲法を調べた事があるんですが、武力を持っている国ほど有力な発言権があるという考えを否定すれば、どこの国と比べても日本の憲法は圧倒的にいいものだと思いました。」

そして、それに絡む国防については

「日本の国防は、今の憲法でも攻め込まれたときにそれに応戦する自衛権ということで、消極的な意味での国防ですけど、十分、成り立つわけですね。」

とも言っています。
糸井重里さんはそれを受けて、「正直は最大の戦略である」という山岸俊男さんの研究を取り上げ、自衛権のみを持つ今の憲法との類似点を指摘しています。(僕はこれを、攻めないのが一番有効という風に解釈していますが、山岸さんの研究についてはほとんど勉強していないので、見当違いな解釈かも知れません。山岸さんの本は近いうちに読みたいと思っています。)

僕が読み取った部分をまとめると、以下の3点になります。

  • 「日本は平和の灯火」という認識が(全世界ではないにしろ)ある(中村さん)
  • その認識のもととなっている憲法第九条がよいものである(吉本さん)
  • その憲法は、国防の目から見ても、最も有効である(山岸さん)

以前「日本は平和の灯火」という話を聞いたとき、日本がこうあるべきという、大きな道しるべを得たように感じていたのだと思います。それはいったん見失いかけましたが、今はより強固なものとして見えるようになりました。
とても大きな収穫でした。

悪人正機 (新潮文庫)

悪人正機 (新潮文庫)