ダルフールで何が起きているのか。

ダルフールの通訳 ジェノサイドの目撃者』の筆者のダウド・ハリは、ダルフール出身。自身の住む村が襲われチャドへ逃げ、ジャーナリストや援助団体の通訳、そしてダルフールへ入るための手助けを仕事ととする。本書には、その目線で見たダルフールの様子が生々しく記されている。このエントリーではそれを通して、ダルフールで何が起きているのかを紹介したい。

ダルフール問題概要

ダルフールの概観については「ニコラス・クリストフ記者によるダルフール問題 Q&A 要約: 極東ブログ」がわかりやすい。

Q 手短にダルフール紛争の背景を説明してもらえませんか。
A スーダン西部の、フランス国土ほどの広さのあるダルフール地域は、スーダン政府から長いこと見放され、資源を否定された状態でした。この地のアラブ系遊牧民と農耕を営むアフリカ系部族との間には緊張もありました。1990年代には政府がアラブ系遊牧民の一部を武装させ、アフリカ系部族は警戒しました。
 2003年に同地のアフリカ系の3部族は政府に自治と資源を求めてスーダン政府に反抗闘争を開始しました。が、スーダン政府は対抗し、ダルフール地域からアフリカ系部族の根絶をもくろむようになりました。ダルフール紛争が起きたのはそこからです。
 都市部に住むアフリカ系部族には迫害はそれほど及ばなかったものの、郊外では男性は殺害され、成人女性と少女たちはレイプされました。幼い子どもと老人も殺害対象でしたが見逃されることもありました。被害者数は確定していませんが、数十万に及ぶでしょう。
 すでにダルフール地域には居住可能な村もないほど破壊され略奪されたので、最悪の殺害時期は過ぎ去っています。しかし、逃れた人々は難民キャンプで苦難の日々を送っています。
 支援者が今この地を離れることになれば、犠牲者は膨れあがります。

Q ダルフール紛争は水争いなど農業が原因なのではないですか。遊牧民と農民は対立するものではないでしょうか。
A そういう面もありますが、そう考えることで間違うこともあります。考えてもみてください。チャド、マリ、ブルキナファソニジェールにも紛争はありましたが、ジェノサイド(民族抹殺)には至りませんでした。南北問題を含めて、問題の根幹にあるのは、スーダン政府なのです。
ニコラス・クリストフ記者によるダルフール問題 Q&A 要約: 極東ブログ

これは、本書の内容とも一致する。が、もうちょっと詳しく見ておこう。アラブ系とアフリカ系が緊張状態にあったところからしか述べられていないが、その前、様子はもうちょっと違った。緊張状態の原因として、飢饉があった。

最近の気候変動のせいで、アラブ遊牧民は、これまでよりもっと南までザガワ族の土地に入り込んで放牧をしなければならなくなった。以前ならアラブ人は事前にザガワ族に許しを求め、何頭かのラクダが持ち主を変えるだけで事は済んだ。もし取り引きが不調に終わり、遊牧民が勝手に水や草を使うことになってしまった場合、異議が申し立てられ、村から遠く離れたいつもの決闘場で名誉をかけた闘いが行われる。ひとたび闘いが終われば、問題はすっかり片付いたものとされ、アラブ人とザガワ族は直ちに元通りの友人同士に戻り、お互いの家に呼び合って一緒に食事をしたものだ。
事情が変わったのは、なるべく多くの定住民族を国から追い出したいスーダンのアラブ系政権が、アラブ遊牧民に肩入れし、遊牧民側に銃やヘリコプター、爆撃機、戦車を提供し始めたから。これに反発したザガワ族の若者の多くが抵抗組織に加わった。スーダン政府指導者は村という村をしらみつぶしに回ってこうした抵抗軍戦士を捜し出し、女性には武器を引き渡すよう男たちを説得しろ、さもなければ家を焼くぞと脅した。「安全に暮らせる」大きな町や都市に移住せよという圧力もかけられた。しかし、もしそれに従えば、待っているのはどん底の貧困生活だ。
P.31-32

飢饉についても理解しておかなければならない。気候変動はもはや一過性のものではなさそうだからだ。一九八〇年代半ば以降、家畜のためのほんの一握りの草、井戸に残ったわずかな水を巡って、アラブ遊牧民と、定住生活を送っていた土着のアフリカ部族民はより熾烈な争いをせざるを得なくなっていた。アラブ遊牧民はザガワの土地のより南方まで足を延ばしていった。ザガワ族の中にも、さらに南のマサリト族やフール族の土地にまで入り込む者も現れた。
気候変動によって部族間に軋轢が生じた。バシールは、以前飢饉のせいで大統領が権力の座を引きずり下ろされたことがあるのを知っている。実はダルフールの地下には、新鮮な水をたたえた巨大な水瓶がいくつもある。もし土着民をこの土地から追放できれば、ここにアラブ系農民を迎え入れ、大規模な農場を発展させられるはずだ。スーダンとエジプトは、アラブ系エジプト人に対して、事実上ダルフールおよびスーダン国内のその他の地域への流入を許す「四つの自由合意」という条約に調印した。もし水資源が賢明に使われ、一度に大量消費されるのでなければ、新しく農地を作るのはいいことだろう。だがどうして、まずわれわれ土着の部族を故郷に戻し、それと並行してこうした農地を開発し、アラブ系農民を育成してはいけないのだろう? もし土着の人々がこの水資源を利用できれば、こうした農場や、そこで産出される食料が、必ずやスーダンを潤すに違いない。だが今それは許されてはいないのだ。
P.256-257

スーダン政府のやり口をもう少し詳しく見てみよう

スーダンの首都ハルツームのアラブ系政権――スーダンを牛耳っている政府――は、あるゲリラ組織に一時和平を約束したかと思うと、別の組織とも次々と口先だけの約束を繰り返し、それによって非アラブ系住民同士の争いを続けさせる。政府は、野心に燃える隊長と取り引きする。戦闘が終結したらきっと政府が要職に取り立ててくれると信じるような輩だ。
P.29

政府はまた、以前からこの地に住んでいて、われわれとも仲良くしてきたアラブ系部落のいくつかに金を握らせ、ジャンジャウィードと呼ばれる殺人騎馬部隊を組織して、非アラブ系住民を殺し、村を焼き払わせているとも言われている。
P.29

スーダン政府は、このようにアラブ系遊牧民はおろか、非アラブ系の反乱軍をも使って、紛争を継続させている。その武器は金と権力で、その資金源は石油、そして輸出先の一位は中国、二位は日本。

ダルフールの社会システム

もう一つの予備知識として、ダルフールに古くからある社会システムを見てみよう。

わたしはサルタン(首長)の邸に向かった。いくつかの大きな小屋を柵で囲った一画だ。ここに来れば誰でも、各々マットレスをもらって敷地内の戸外で寝られるし、ちゃんとした食事ももらえる。サルタンがみんなの面倒を見ることになっているからだ。
戦争のため何千という人々がサルタンを頼ってきていた。サルタンは、王国のいくつかの地域を束ねるオムダ(部族長)と、一つ一つの村の面倒を見るシャイフ(村長)に、難民の世話を命じていた。
たとえば北ダルフールには、こういうサルタンが五人いる。西ダルフールにも何人かいるし、南ダルフールにも数人、そしてチャドにもこのサルタンのような首長が何人かいる。古代ダルフール国家はこんな形で形成されていた。ダルフールはいまだに十六世紀と同じ形で成り立っているのだ。
P.55

もちろん、キャンプのそれぞれには名前を登録するところがあって、いつもそこをチェックする。だが、人の動きがあまりにも複雑過ぎるし、怯え切った人もいれば、文字を読めない人も多く、何より、完璧な名簿を作るにはあまりにも多くの人が家を追われていた。今やその数は二百五十万人に膨れ上がっていた。それでも、常にシャイフたちの方が、NGOよりも正確な情報を把握していた。
P.112
難民キャンプでの名簿作りについて

アラブ系遊牧民とアフリカ系農民がこれまでうまくやってきた背景には、このような社会システムがあった。しかし、スーダン政府がそのバランスを破壊した。

もうひとつ、彼らの部族意識について。

母は何か言おうとしたが、また両手とショールに顔を埋めて泣き出してしまった。このときまでに亡くなったいとこは、おそらく二十人以上いただろう。その一人一人が、母にとっては息子であり娘同然だった。部族の暮らしではいとこはきょうだい同然に育つ。誰が亡くなってもわが身を切られるように辛い。
P.75

だれが手を下すのか。

アラブ系、アフリカ系共に武器を持ち戦闘に加わる。彼らは誰なのか。

気持ちの上では彼らは死人も同然だ。自分の未来を一時間刻みで数えている。だから往々にしてひどく残忍になる。出会う者は皆、自分と一緒に来世に行くものと決めてかかっているかのようだ。彼らの多くは家族を殺され、自分の村が焼かれるのを目にしている。跡形もなく故郷を消し去られ、家族を皆殺しにされた人間が、わが手で敵を見つけ出して殺し、自分も安らかに死んでいきたいと思うのも無理はない。
P.21

男たちの多くが抵抗組織に参加していた。まだようやく十代になったばかりの少年が、家にある武器を持ってトラックの後ろに乗り込み、それっきり戻らないことも多かった。少年たちの家族は、彼らを引き止めはしない。まるで、どっちみちみんな死んでしまうということを誰もが受け入れているかのようだった。どこへ行くかはそれぞれが決めればいい。そんな風だった。われわれの上に世界の終わりが訪れていた。
P.71-72

こんなセンチメンタルな人たちばかりではない。

「他の反乱組織がわれわれに楯つかなくなれば、殺し合いも終わるだろうよ」
それはほとんど独り言だった。
「本当にそう思ってるんですか? あっちこっちに新しい反乱組織が現れ続けているのはどうしてだと思います?」
彼はわたしを見たが、二人ともが気づいていることを認めようとはしなかった。この男はもはや自分のことしか考えていない。いつかスーダン軍で昇進する日が来るとでも思っているのだろう。戦争は人をこんな風にしてしまう。市民を追い出すため政府が村々を襲撃し続ける限り、反乱組織がなくなることはない。今や血を分けた兄弟同士が殺し合いを始めた反乱組織同様、彼もまた自分を見失い、家族や仲間を忘れ、自分のことだけを考えるようになってしまったのだ。
あるスーダン政府についた、ある反乱組織の指揮官の話
P.186

いわゆる「野心に燃える隊長」だ。

そして少年兵。

襲撃者側の一人が捕まり、こっぴどく殴られていた。まだ十四歳くらいの少年だった。別の襲撃者が背中を撃たれて、木立の外れの砂地で死にかけていた。彼の倒れている周り中に血が溢れていた。たぶん体内の血液のほとんどが出血してしまっていただろう。彼も十四歳くらいだ。二人とも、アラブ人ジャンジャウィードの少年たちだった。わたしたちは殴られていた少年に聞いた。
「どうしてこの村を襲ったんだい?」
「俺たちはすぐそこの村の者だ。この村の人たちとはずっと友達だったよ」
「じゃあ、どうして?」
「政府軍の兵隊に、この村の人たちが俺たちを襲いにくる、そしたら俺たちみんな皆殺しになるって言われたんだ。俺たちが先にこの村をやっつけないとだめだって。やっつけたら金をくれるって」
それは米ドルにすれば二百ドルくらいの金額だった。大金だ――もし本当に支払われるとすれば。
「うちにはその金が必要だし、俺らは家族を守らなきゃならなかったんだ」
なるほど、だから彼らは来たのだ。殴られた少年を村人に託して、われわれは立ち去った。彼が村人に優しく扱われるはずはない。さっきも言った通り、彼はたった十四歳だった。
P.133-134

「それから、まだある。チャドにいる君たちの部族のみんなが、こんな話を耳にしてるんだ。勇敢な兵士が集まってる大きな部隊が――君たちも今はその一員だけど、君たちと、君たちの新しい友達――ジャンジャウィードのことだ」彼を囲んだ少年たちは身を乗り出した。
「そうだ、君たちの勇敢な新しい友達が、ダルフールの女子校を襲ったんだ。そして、女の子と先生四十人をレイプした。女の子たちの中には、まだたった八歳の子もいたんだ。十五人は酷い怪我で血まみれになって、その後長い間入院しなきゃならなかった。病院で女性看護士がこのことを報告すると、その看護士も連れ去られ、二日二晩の間殴られ、レイプされ続けた。その上短剣で何度もひどく斬りつけられた。君たちだったらそんなことするかい?」
少年たちは互いに顔を見合わせた。
「もちろん、するもんか」リーダー格の少年が言った。
「俺らの姉さんや妹たちかもしれないんだから」
全員が頷いた。雨が激しく降り出し、少年たちはひょろひょろした木の下に肩を寄せ合った。
「じゃあ、もしそれがアラブ人の女の子だったら? アラブ人だって、やっぱり家族なんじゃないのかね?」とアリは迫った。
「なんでだよ?」リーダー格の少年が尋ねた。
「彼らだって人間だからさ、だから誰もがみんな、家族なんだ」そう言って、アリは両腕を大きく広げた。同時に雷鳴が轟き、彼の話に素晴らしい効果音を添えた。
「うん、そうだな」少年が言った。少年たちみんなの瞳に、魂の輝きが戻って来たのが分かった。やせ細った木では防ぎきれない土砂降りの雨が、彼らの若々しい顔を洗った。
この少年たちは長い間まともな食事をしていない。人生に失望し、こんな年頃からナツメヤシで作った質の悪い酒を飲み始めている。父親と十分な時間一緒に過ごすことができなかったから、ハンターとしての腕も磨けず、自分が食って行くだけの獲物も捕れない。この時期、こうした少年たちが、夕食のために大きな鳥や獲物をしとめようと近場に狩りに行き、結局は手ぶらで戻って来るのを見かけていた。
チャドの難民キャンプに行けば、食べ物ももらえるし、生活の面倒も見てくれる、学校にだって行ける、家族も見つかる、それにもう誰も傷つけなくて済む、そうアリはアドバイスした。スパイでもないのに、アリは少年兵たちの考え方を変えさせるのがとても上手かった。
わたしは、ずっと押し黙っていた少年に、どうして戦うのかと聞いてみた。
「だって他にどうすりゃいい? 何もできねえだろ。家族は死んじゃったし。金もない、家畜もいない、何にもねえんだから。ここにいりゃ、毎日食いもんだけはもらえる」
「チャドの難民キャンプに行けばいいさ。アリが言ったように、食べるものももらえるし、学校にも行ける。君にとってはきっといいよ」
「キャンプなんか行きたかねえよ、自分の生まれたところを離れるのは嫌だ。死ぬときは故郷で死ぬんだ」
なるほど、こういう事にかけてはアリの方が上手だ。
P.191-193

こうして見るように、彼らは決して人の心を失った悪魔ではない。大人の兵士でも、たとえばこんな場面もある。

着陸のための旋回に入ると、一人の指揮官がわれわれに、最近何か食べ物を与えられたかと聞いた。彼の考えていることが分かって、若い整備士とわたしは思わず笑ってしまった。つまり、ちゃんとしたもてなしをしなかったために、空中で災難に遭ったと思っているのだ。わたしは、このところほとんど何ももらっていないと答えた。着陸したらちゃんと食事をさせてやると指揮官は言った。ここには人をもてなすことについての厳しい決まり事がある。時折、ひょんなところでそれが顔を出すのだ。
P.209-210
エルシャファルへ護送される途中、ヘリが銃撃されて

人間らしく話のできる相手に会って、大佐も少し喜んでいるようだった。
エルシャファルで大佐の尋問 P.227

ジェノサイドの風景

しかし、そんな彼らがひとたび武器を取れば。そこには想像も及ばないグロテスクな風景が現れる。

村はほとんどなくなっていた――六十ばかりの黒く焼け焦げた地点、そこではかつて一つの世界が生命を謳歌していた。雑穀を入れた大きな壷、夥しいマットレスや毛布、たくさんの木々や小屋の一部がまだ煙を上げていて、谷間に入るずっと前からその匂いが漂っていた。
P.89
襲われた後のダウドの村

この少女たちや女性たちは、料理の燃料にするために、周辺の荒れ地から小枝を拾ってきていた。まもなく周辺には一本の木切れもなくなり、現地の部族を怒らせてしまった。やむを得ず彼女たちは、薪拾いのために、だんだんと遠くの危険な地域まで足を延ばすようになった。その結果、今や難民キャンプで薪を手に入れるためには、レイプされるのが通り相場になってしまった。男が薪拾いに行ったり、用心棒として付いてきてもらったりすれば、その男は殺されてしまう。だから女性や少女たちだけで小さなグループを作って出かけ、結果、地元の男たちにしょっちゅうレイプされる。これはダルフールでも同じだったが、そこでのレイプ犯はジャンジャウィードだ。そして次に女性が直面するのが、望まれない子供の妊娠という悲劇だ。
P.106
スーダンとの国境付近にある、チャドのブレイジン難民キャンプについて

ある村のはずれだった。鬱蒼と木々が立ち並ぶ一帯で、その村の防衛隊は最後の抵抗を試みたのだ。ライフルを手に木の高いところまで登り、木の幹に体を括り付けていた。全員がすでに撃ち殺されていた。男たちが木の上で死んでから、すでに三日以上が経っていただろう。この蒸し風呂のように暑い春の午後、遺体は腐り、地面に落ち始めていた。われわれは、時折頭上から人間の手足や頭が落ちてくるこの奇妙な世界を歩き回った。わたしのそばに脚が落ちてきた。ちょっと離れたところには、どさっという音を立てて頭が落ちてきた。木立一帯に毒ガスのようなものすごい臭気が立ち込め、目にまで染みた。しかし、次に目にする光景に比べれば、これすらまだ序の口だった。同じときに襲撃された八十一人の男と少年たちが、切り刻まれ、刺し貫かれて、折り重なるように死んでいたのだ。
P.156

ジャンジャウィードの一人が、残酷なやり方でわたしを殺そうとし始めた。それを見ていられなくなったんでしょう。娘は叫びながらこっちに走ってくるんです、アバ、アバ、って」
パパ、パパ、という意味のその言葉に胸が詰まって、彼は長い間押し黙った。
「わたしを木に縛った男が、走ってくる娘を見て、ライフルを下ろすと、娘が駆け寄ってくるちょうどそこのところに銃剣を構えて、娘を突き刺したんです。すごい力でね。お腹に刺さった刃が背中まで突き通って。娘は、アバ、アバって泣いてた」
「それから奴は娘を突き刺したまま、銃を高く持ち上げた、娘の体から吹き出す血を全身に浴びながら。娘を空中に掲げて踊り回って、他の奴らに叫んだ、おい見ろよ、すげえだろ俺。仲間の奴らは他の人間を殺しながらはやし立てた。やったぜ、すげえ、すげえぞ、すげえぞお前!助けを求めて、娘はわたしの方に片手を伸ばした、どんなに痛かったろう。アバって言おうとしてた、でももう声は出ないんだ。」
「死ぬまでにはずいぶん時間がかかった、娘の血がぽたぽた落ちて、奴は真っ赤に染まってた。あいつは何だったんですかね? 人間ですか? 悪魔ですか? 小さな女の子の血で真っ赤になって、踊ってたんだ。あれは、一体なんだったんですか?」
P.118-119
スーダンとの国境付近にある、チャドのブレイジン難民キャンプにいた男の話

わたしたちには何が出来るの

ダウドからははっきりとした要望がある。

これを読んでくださっている読者の皆さん、もし今皆さんとも友情の絆を結ぶことができたのであれば、どうか考えて頂きたいのです。今夜わたしがこれを書いている今、そしてたぶん皆さんがこれを読んでくださっている今も、ダルフールではいまだに人々が殺され、難民キャンプで苦しみ続けているという現実を。もし世界中の人々が、世界中のリーダーに、この事を深く憂慮していると伝えてくれるなら、世界中のリーダーはきっとこの問題を解決することができ、ダルフールの人々は家に帰ることができるでしょう。もしあなたにそうする時間があれば、きっとできるはずです。読んだ人が行動を起こしてくれなければ、わざわざ危険を冒してニュースを伝える意味はないからです。
P.246 あとがき

ダルフールの通訳 ジェノサイドの目撃者
ダウド ハリ
ランダムハウス講談社
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おすすめ度の平均: 5.0
5 邪悪そのものが跋扈するダルフールの現状
5 スーダンダルフールで起こった映像としては伝えられない壮絶な事実
5 人間として知っておくべきこと
5 難民キャンプからの静かなメッセージ


いくつか参考リンク。
ダルフール紛争 - Wikipedia
http://www.msf.or.jp/special/Top10_2008/sudan/index.html
ナショナルジオグラフィック誌のサイトでは、ダウドが同行したポール・サロペックの記事が読める。
特集:地球の悲鳴 アフリカの無法地帯 サヘル 2008年4月号 ナショナルジオグラフィック NATIONAL GEOGRAPHIC.JP