日本は学力低下していない!?全国学力テストの必要性

昨日、実に43年ぶりに行なわれた全国学力テスト。その目的は学力向上であり、さらにその前提として学力低下がある。
だがこの前提がそもそも間違っているとしたら。


学力低下を示すデータとしてIEAの調査、TIMSSが引き合いにだされる。ニュースでも、この結果を受けて学力低下を報じる。しかし、これは順位以外の要素をまったく考慮していない、短絡的な議論である。
数学の順位の変動を、参加国数の変動といっしょに見てみよう。


TIMSSにおける日本(中学2年生)の順位の変化

数学 参加国・地域数 日本より上位の国・地域(上位順)
1964年 2位 12 イスラエル
1981年 1位 20
1995年 3位 41 シンガポール(初参加), 韓国(初参加)
1999年 5位 38 シンガポール, 韓国, 台湾(初参加), 香港
2003年 5位 46 シンガポール, 韓国, 香港, 台湾


順位を下げ始めた1995年以降、日本より上位に入ってきているのは、初参加の国々ばかり*1である。
では、日本が順位を下げた理由は。
× 日本の学力が低下しているため
○ より学力の高い国が調査に加わったため
である。


理科についても同様で、シンガポール、韓国、香港、台湾、エストニアが途中参加して、日本より上位に位置づいている。

理科 参加国・地域数 日本より上位の国・地域(上位順)
1964年 1位 12
1981年 2位 20 ハンガリー
1995年 3位 41 シンガポール, チェコ
1999年 4位 38 台湾, シンガポール, ハンガリー
2003年 6位 46 シンガポール, 台湾, 韓国, 香港, エストニア

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/12/04121301.htm


さらに考慮しなければならないポイントとして、統計学的な誤差がある。2003年の理科の調査結果を見ると、香港、エストニア、日本の間には、有為差はない。調査結果の数字に差こそあれ、そこに統計学的に意味のある差はないのである。


もうひとつ、OECDによる調査、PISAもある。
ここでも2000年から2003年にかけて大きく順位が下がっているが、統計誤差を考慮した順位グループを作ると以下のようになる。


PISAにおける日本(高校1年生)の順位の変化

数学の応用力 数学(誤差考慮) 読解力 読解力(誤差考慮)
2000年 1位 1位グループ 8位 2位グループ
2003年 6位 1位グループ 14位 2(3?)位グループ

PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査:文部科学省


つまり、どちらのデータを見ても、日本の学力は相変わらず世界のトップレベルなのである。


以上は、池上 彰『ニッポン、ほんとに格差社会?』「日本の生徒の学力は低下している」からの劣化コピーである。この中ではさらに、日本の生徒は数学、理科が嫌いであること、家で勉強する時間が減っていることが指摘されている。


はたして、このような前提でも、学力テストを実施する意味はあるのだろうか。
文部省の「詰め込み教育」批判、「ゆとり教育」批判に対する場当たり的な対応こそ問題である。*2


そしてこちらの本、メディアリテラシーを学ぶのに非常に有用だ。

ニッポン、ほんとに格差社会?

ニッポン、ほんとに格差社会?

*1:例外は香港

*2:結びが適当だったので削除しました。